仕事柄、空き家問題にかかわることが非常に多いのですが、今回はそんなお話です。

 先日お客様からこんなお話を聞きました。お客様のマンション(Aと記載します)は、もう築40年以上が経過し、新築時に入居した方々はマンションと同様にお年を召されているそうですが、マンションの隣にあった工場が閉鎖され、更地になった敷地に新しいマンション(Bと記載します)の建設計画が持ち上がったそうです。

 そしてAのマンション理事会に、Bのマンションデベロッパーより、以下のような提案を頂いたそうです。

 今回Bマンションを建設するにあたって、良かったらAのマンション住人の方の同意があれば、Aマンションを取り壊して敷地を買取ります。勿論、住人の方には現居室に対して中古販売市場での価格相当をお支払いいたします。

 そしてBマンションをAマンションと工場跡地を合わせた敷地でマンションを建てます。Bマンションが建った暁には元Aマンション住人の方に一般公開前にAマンションを買い取った金額+αで優先的に販売します…

 端的に言うと「新しいマンションを建てるけど、Aマンションの敷地があれば、より良いマンションが建てられるから、良かったら住み替えない!?悪いようにはしないよ!」という感じだそうです。

 どうやら工場の敷地だけでBマンションを建てると100戸分しか作ることが出来ないのですが、Aマンションの敷地を足して建てると400戸分のお部屋を作ることが出来る、そんな裏事情があるみたいでした。

 日照権やら建築法やら色々な事情があるのでしょうが、仮に100戸しか作れない場合と400戸作れる場合では、Aマンション住人の方に100戸あげたとしても200戸多く作れるのでデベロッパーにとってはそっちの方が美味しいということみたいです。

 無論、建て替え中はどこかに引っ越さなくてはならないなど、色々な問題もあるのですが考えようによっては凄いラッキーなお話です。

 そんなこんなで突然降ってわいたBマンションのデベロッパーの提案にAマンションの理事会、いや住民全体で総会が開かれ、かつてない白熱した議論が交わされたそうでした…

 降ってわいたこのお話に乗るか、乗らないか。個人的には「絶対乗るでしょ!?」と思ったのですが、各住人のご事情はそれぞれのようでした。そして各住人のご事情、というかステータスは大きく分けて2つのようです。

  1. マンション新築時から住んでいるご年配の方
  2. マンションの築年数が経過し、比較的マンションが中古として割安感が出たタイミングでご入居された若い方

 さて、総会・各住戸に意思確認をした結果、どうなったかといいますと…結果は「現状維持」つまりこの話はなかったことになりました。

 現状の法律ではマンションのこういったこと(建て替えなどの規模の大きな話)は区分所有者の3/4の同意で決まるそうですが、現状維持派が少なくとも1/4以上はいらっしゃったみたいですね。

 1.の方々としては「ワタシももうあと何年生きるか分からないし面倒なことはしたくない」という感じの意見が多かったみたいです。うーん、お気持ちは分かるのですがご自身のことだけでなく、今後の相続のことを考えたりすると個人的にはお話に乗った方が良かったと思うのですが。

 実際のところ、3/4の同意を集めるというのは難しいでしょう。基本的に古くなったマンションには1.のようなご年配の方が多くなるわけで、大変な引越し作業をして2、3年くらい別の住宅に住んで…という負担を考えると「現状維持」に傾く気持ちもわかります。

 んで、ようやくここでタイトルの回収になります。近年取りざたされることが多い“空き家問題“ですが、一般的に戸建てでイメージされる方も多いと思いますが、今後はマンションでこの問題が多発することが予想されます。

 一部の地方では問題になり始めていて、バブル期に建てられたスキーリゾート近辺のワンルームマンションなどはその典型です。

 管理する方がいなくなった戸建ての空き家であれば(あくまでもイメージですが)雑草や樹木が生い茂り、朽ち果てた建造物が台風や地震などで倒壊する危険があり、また不衛生な状況から蚊などが大量発生て迷惑…そんな問題が出てきます。

 不動産に「価値があれば」相続したい人たちがわらわらと出てくるものですが、「価値がない」不動産は誰も欲しがりません。価値がない不動産は“負動産“などと揶揄されているようですが、問題は“負動産“は相続を「放棄できる」という点です。

 結局のところ“負動産“所有者に借金などがあると、ほぼほぼ相続されずに放棄されるようです。そうなってくると放棄された居室の所有権はどうなるのか?多くの場合、管理組合に移転するみたいですが、この場合、管理費や修繕積立金は管理組合が支払うことになるそうです。

 勿論、管理組合が支払うといっても結局は居る所有者が払うことになるので結果、管理費などが上がります。売れなくても賃貸で回したりして、その穴を埋めるわけですが、こういった仕事が増えるとますます管理組合員へのなり手がいなくなるということにも繋がっていきます。うーん、まさに負のスパイラル。結局はここら辺は法律をなんとかしなくてはいけないのかな、と思います。例えば築年数によって建て替えなどの区分所有者の3/4の同意割合が変わっていく、とか。40年を超えると1/2でよい、とかですかね。

 本当に世間を騒がすような大事件とかがあれば即に法律が変わったりするものですが(姉歯事件とかね)逆に言えば地味にむしばんでいくような問題はなかなか法律が追い付かなかったりするのが現実です。

 マンションというものは良いものですが、全ての物は永遠ではないことを考えると建てる時だけでなく終わりを見据えた法整備の必要があるかと思います。便利屋は「終わり」の部分に関わることも多いので色々と考えてしまいますが、単純に民主主義=多数決だけで物事が決まるということだと現状では数の多いご老人の意見が常に優先されてしまうんですよね。

 世代によって事情はそれぞれなので難しいのですが、将来的なことも考えて色々なことを決定していくことでマンションも「持続可能」になるのかなと思います。とはいえ人間ってやっぱりそんなに先のことを考えれる人の方が少ないので、やっぱりマンションはこれ以上建ててはダメ、なんて時代が来て戸建て回帰時代が来たりするなんてこともあるのかなー、とかも思います。一部の自治体でタワマン禁止なんてて出てきているみたいですね。

 便利屋の世代なんかは「個性を大事に」なーんて育てられた世代ですが、みんなが個性的になってしまうと話がまとまりにくくなるよな、なんて思います。難しい問題ですが時間をかけて解決に向かってほしいものです。

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